東京高等裁判所 昭和36年(ラ)576号 決定
本件強制執行停止決定(東京高等裁判所昭和三四年(ウ)第七五四号)は東京地方裁判所昭和三二年(ワ)第二、一二一号事件の建物収去土地明渡の仮執行宣言附判決の仮執行停止のためにせられたものであり、相手方は右停止のために本件担保を供したものであつて、右停止事件の本案である東京高等裁判所昭和三四年(ネ)第四〇六号事件は昭和三六年六月二一日控訴審判決の言渡があり、この判決において、右建物収去土地明渡の部分についての第一審判決は取消され、この部分についての抗告人の請求は棄却せられたものである。従つて右第一審判決の右部分についての仮執行の宣言は、相手方主張の通り、民事訴訟法第一九八条第一項の規定によりその効力を失つたものというべきである。しかし右仮執行宣言がその効力を失つたことから直ちに前記停止決定のための担保の担保事由が止んだこととなるか否かにはなお考うべき問題がある。若し右控訴審判決がそのまま確定するか、上告があつても上告棄却によつて確定するに至れば、抗告人の右建物収去土地明渡の請求は理由がなく、その請求ができないことに確定するのであるから、抗告人は前記の仮執行停止によつては何等の損害賠償をも相手方に求めることはできないことになり、従つて担保の事由が止んだこととなるのは明らかである。しかし右控訴審判決に対して上告の提起があつて、右判決がまだ確定しない間は、抗告人の前記請求が認められるかどうか、まだ確定しない状態であつて、場合によつてはその請求を排斥した二審判決が取消され、右請求が認容せられる事態も起り得るわけである。従つて右のような二審判決の未確定の状態では、なお抗告人は、前記建物収去土地明渡の仮執行宣言附第一審判決の仮執行が停止せられたことによつて蒙つた損害の賠償を、停止決定の申請者である相手方に請求し得る可能性を持つものであり、この可能性のある限り、なお担保の事由が止んだものと解することはできない。
(原 山下 吉井)